メコンデルタへ  


メコンデルタのあたりに行ってみよう。そんな風に思って日本を出発した今回の旅。
仕事に振り回されて疲れ切ってしまった心と体を休めたい。それなら水のあるところがいい。だったらメコン川なんかいいんじゃないだろうか。そうだ、まだ未踏の地であるベトナムのメコンデルタまで行ってみるってのはどうだろう。マイルも貯まっているからお金もかからないし。よし、じゃあホーチミンだな。つーかもう考えるのもめんどくさいしそこでいいか。といった具合に、わりとあっさり行き先を決めました。
メコンデルタに関しての知識は、あるようでないものでした。ジャングルっぽい風景の中を手こぎボートで進むクルーズ。もしくは船の上で開かれる市場。いわゆるベトナムの旅のポスターでありがちな、絵に描いたようなのどかな風景があって、それにプラスして素晴らしい大自然と静寂が待っているに違いない。ワタシはその場所でのんびりしながら本を読んだりビールを飲んだりして、怠惰な生活を満喫するのだ。そのためにはリバービューのステキなホテルに泊まりたいのだ。そんな風に思っていました。
ホーチミンに到着したワタシは、夢に描いたような怠惰な生活を送るためには、まずどこに行くべきなのかということを考えました。歩き方とロンプラのコピーを照らし合わせながら、どの街をどのくらい時間をかけてまわるか思案します。なかなかよい案が浮かばなかったものの、ロンプラに「なんにもないところ」、そして「湖の前のカフェでコーヒーを飲むのも悪くない」みたいなことが書いてあったのが決め手となり、まずはベンチェーという小さな町へ向かうことに決めました。それからミトー、そしてさらに河口にあるカントー方面へと向かえばムダもなく、うっかり長居して時間がなくなってもカントーをカットしてしまえばよいと考えたのです。つまりは保険付きともいえるルートでした。
翌朝。宿を出発したワタシはバスターミナルへと向かい、ベンチェー行きのミニバスに乗り込みました。そして約一時間半後、勘違いからルートの途中でバスを降りてしまい、さらには話がまったくかみ合わないバイタクに乗車。しばらく走った後に「で、キミは結局どこに行くのだい?」と言われて、初めて自分がベンチェーにいないということに気が付きました。…バカですねぇ。すべては英語が通じないこと、そしてカタカナ発音のベトナム語も通じないところに原因があります。どうしようもなかったのです。
じゃあ果たしてココはどこなのかとバイタクを路肩に止めてドライバーとすったもんだやっていると、偶然その場を通りかかったベトナム人男性がワタシを救出してくれました。彼はミトーの旅行会社と契約しているという日本語ガイドで、日本人と日頃からんでいるせいか思考回路も日本的。そして日本人よりも流暢な日本語を話す若者でした。そんなラッキーな出会いからワタシは彼のバイクに乗り換えることになり、3キロほど先にあったミトーに滞在することになったのでした。
ちなみにミトーはベンチェーより手前にある町で、通常ならミトーからベンチェーへと移動するのが普通です。もともとミトー自体ホーチミンからの日帰りツアーに参加してやってくるような場所ですから、結果的にワタシのように4泊もした旅行者のほうが圧倒的に少数派なわけで。まぁ、それについては置いておきます。
ミトーに到着すると、ワタシはいくつかのホテルをチェックして歩き、最終的にメコン川沿いに新しく建てられたというランドンホテルの新館にチェックインしました。大幅にディスカウントしてくれたことに加え、メコン川のド真ん前というシチュエーション、そしてホテルとホテルマンたちの雰囲気が良かったところが決めてとなりました。といいますか、ミトーのホテルのレベルが低すぎて、他がいまひとつだったというのが一番大きな理由かもしれません。
ワタシがランドンホテルを訪れたのは午後二時頃で、なんとものんびりした空気が流れておりました。明るくクリーンなロビーと、水は張ってないもののプールだと思われる広い空間。緑が多い敷地。ホテルマンたちはみんな暇なのか、船着き場から釣り糸を垂らしていたりして。その緩さがまたいい感じに見えました。
ここならメコン川を眺めつつビールを飲むことができるし、フェリー乗り場も近く、行きたかったベンチェーだって目と鼻の先。通常20ドルほどする部屋を13ドルで使わせてくれるというのも嬉しい話でした。そんな流れがあって、これはこれから過ごす数日間がとても楽しいものになるはずだと思いながら、ワクワクしつつチェックインしたのでした。
そして迎えたミトーの初夜。カナルツアーから戻ってきたワタシを待っていたのは、なんとも耐え難いカラオケの爆音でありました。一体どこのどいつだとチェックしてみると、なんとホテルの敷地内にカラオケ屋が併設されており、爆音はそこからやってきておりました。ドアや窓は開けっ放しの騒音垂れ流し状態。まさかベトナムでこれほどカラオケが開放的だとは思ってもみませんでした。
ワタシは愕然としながらも、これからどうするのがベストが考えました。なぜならベランダからの眺めは昼も夜も素晴らしく、部屋はピカピカ、騒音さえガマンすれば90点を差し上げられるステキな宿なのです。それなのにドアを締め切っても防げないベトナミーズの歌声。果たしてどうするべきか。明日チェックアウトしてベンチェーに移動するか、それともこのままガマンして滞在するか…。
結局その後、ワタシは何度もチェックアウトしようするも最後には思いとどまり、ベランダでヘッドホン状態を貫いて爆音の夜を乗り切りました。ひいてはカントーへの移動も諦め、ミトーを満喫することになったのでした。それは爆音以上にベランダからの眺めが素晴らしすぎて、移動する気になれなかったからでありました。


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